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「岩田本へのイチャ門」・・・その一

リフレ派の雄であるはずの岩田規久男氏の「『小さな政府』を問い直す」を友人から紹介されたのですが、新自由主義への転向かとの疑念を抱かせる内容です。


社会市民連合


一読して、書かれた時期から見てインフレ到来を予測して新政策への転換なのかと感じましたが、熟読すると疑いが出てきました、そこで重箱の隅を突いて見ます。

「岩田本へのイチャ門」・・・その一

第一章「大きな政府」へ

「ケインズによる新しい経済理論の登場」 P17

岩田氏(以後氏)はケインズ政策の一つとして、「減税は人々の可処分所得を増やすから、消費需要が増える」と簡単に紹介している。
しかし、現実としてはこうは行かないでしょう。なぜなら「減税」は課税所得に達している比較的裕福な層にしか可処分所得の増加をもたらさないからです。
特に、長期に安定した経済環境が続き世代間継承性が確立した社会では、高・中所得者の段階ではそれぞれに見合った需要は既に満たされており、さりとて一段上の需要を持つには「減税」程度では不十分だからです。
この層の持つ潜在需要を掘り起こすには、所得の倍増くらいでないとその用を成さないでしょう。

これを政策的に行っているのが新自由主義政策で、恣意的に高額所得者の負担を減じ、金融政策などを通して産業振興の名目などで所得増を図っているのです。しかし、これは政策による「貨幣の偏在強化」ですからもう片方で更なる消費の減退を招いているのです。この政策を継続すれば起きてくるのは中所得者の低所得者への転落です、元々、下層には貨幣は有りませんから高所得者へ上積みされる貨幣は中所得者から移転されるしかないからです。
その現象はすでにアメリカにおいて確認されています、日本においても小泉・竹中&阿倍政権のプロパガンダに拠れば記録的に長期にわたる景気回復途上との事ですが、彼らの好きなGDPの増加率は僅か0.4%に過ぎません。
詰まり、新自由主義政策とは資本主義の内包する自滅システムがもたらす需用減少を、高額所得者への政策的所得増加によって一段上の超高額所得者需用を持って穴埋めしようとするものです。
この政策は巷間言われるように、二階層化を進行させますから上部階層での経済と下層階層での経済は交流しません、その為下層において更なる消費の潜在化をもたらすのです。

本気で需要を増やすには、この十数年の新自由主義政策で膨大な潜在需要をためている、最下層への購買力増強を行うしかないはずです。

如何に経済の真相を突いたケインズ理論でも、教条的に当て嵌めたのでは現代の先進国に於ける経済故障への解決策とは成らないのです。


全野


第三章「新自由主義の台頭」

ケインズ理論でも、フリードマン理論でも、その実行段階では政治的に歪められ教条化されることで元の理論とは程遠い姿の制度となる、これでは如何な理想的な経済理論が完成されても「経世在民」は実現できないのです。


「新自由主義はなぜインフレを問題にするのか」 P56

インフレがもたらす増税が問題としている。

これは過去の日本においても実行されていたように、課税境界額を変更すれば済む話であり「新自由主義による棄民政策止むなし」とする理由にはなりません。


「サプライ・サイド・エコノミクスからの応援」 P58

労働所得を貯蓄した時、その利子に対する課税は二重課税であるとの論理は納得できない。

岩田氏は紹介のみに止め、その論理に対する賛否は回避しているがその理由は不明のままです。
第二次大戦後の様な特殊な環境における影響を一般化し、現代のような定常循環時に当て嵌める事は無理があります。経済システムとは“制度”ですから人々の行動は、自身の現状と制度が齎す“環境”とを考慮して決めるのですから、その時々で絶えず変化して行きます。
現在では投資資金は過剰になっており溢れた分が投機資金と化しているくらいです、日銀の金融緩和策にも貸出額が増えたと言う話は聞こえてきません。もっとも、低金利政策で預金者から銀行への所得移転の元と成った資金はは国外で貸し付けられていますから、銀行に不動蓄積されているのでは有りません。
当然ながら新自由主義経済政策で消費性向の低い高額所得者は更に可処分所得が増え、消費性向の高い低所得者は更に所得が減っているのです、この様な消費不足の状況では余剰資金が増え投資しようとしてもしても消費が担保されませんから国外貸付に回すしかないでしょう。
現在の状況ではこれ以上の投資資金は不必要だと言う事です、それより消費を増やす努力をすべきです、例えば年度越しの未消費所得は税徴収とするくらいの強制力を持たせても良いのでは無いかと思われます。

金利と言えど新たな所得なのですから、課税対象になるに何の不思議も有りません。元金に課税されるのでは有りません、何を持って二重課税とするのか私には無理筋としか考えられません。
それを言うなら、所得段階で課税した貨幣に消費段階で再度課税する方が根本的な二重課税でしょう。

ただし、経済システムはバランスが肝心です、理論は厳密でなければ役に立ちませんが実施段階での行き過ぎは、何れの経済思想に立つも厳に戒める必要は有ります。バランスとは大きくは「インフレ環境」か「デフレ環境」かと言う事です、他にも金利動向とか海外要因も有るでしょう、基本は基本として実施に当たっては時々に適したフレキシブルなさじ加減が必要です。

岩田本へのイチャ門・・・その一 終わり

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